茨城不安定労働組合

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日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(509)「初がんのおそれ」

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(509)「初がんのおそれ」
加藤匡通
九月××日(金)
    配管穴埋めあとの天井の補修をしているとこの前書いた。補修に使っているのはハイモルと呼ばれている材料である。通常使っているモルタルより食い付きがいいのだ。粘り気があるといってもいい。だから僕のような素人にも天井の補修が出来る。
    ハイモルには石綿は入っていない。わざわざ謳っているいるということは、かつては入っていたのだろう。袋には大きく「ゼロアスベスト」と書いてある。他にも小さな文字でいろんなことが書いてあるが、まあ普通いちいち読まない。たいていの場合、使い方とか混ぜ方すら読まない。現場で他の人間が知っているし、よほど特殊なものでない限りどうにかなる。
 急結剤と言うものがある。字の通りセメントを早く固める薬剤で、これを入れると本当にすぐ固まりだす。以前、買いに行った者が急結剤を見たことがなくてホームセンターで急結剤と思い込んでその隣の塗料を買ってきたことがある。僕が知っている急結剤は赤い半透明の液体だったが、その液体は白かった。いくら入れてもモルタルが固まらないので改めてしげしげとその缶を見ると、どこにも急結剤と書いてない。使う前によく見ろって話ではあるんだが、まあ現場なんてそんなもんだ(と、自分の不注意は棚に上げる。)。
 この前ハイモルを使っていて、ふと目についた注意書きを読んで絶句した。そこには「重篤な皮膚への薬傷及び眼への損傷/呼吸器への刺激のおそれ/発がんのおそれ/臓器への障害(呼吸器)」とあった。本来ならマスクとゴーグルをしなければ扱えないってことか?しかし左官屋も何もマスクして使ってる姿なんてまず見ない。
 労働者は賃労働において労働力を商品として売っていて、具体的には時間で売っていることになっている。でもこの注意書きを読むと、労働者は自分の身体や人格を売っているのだと思わざる得ない。放射線被曝労働が身体を売る労働の最たるものだと思っていたが、実は大部分の労働がそうなのではあるまいか?でなきゃ人格攻撃が当たり前に行われ、身体を毀損する労働も当たり前になっているこの社会のあり様が理解出来ない。
 さあ、あと何年生きてるのかわかんないけど補修するぞ!