茨城不安定労働組合

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日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(日雇)(572)映画館に完全に振られる

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(日雇)(572)映画館に完全に振られる
加藤匡通
五月××日(月)
 初日に『ゴジラ×コング 新たなる帝国』を見たが、駄目な頃の東宝チャンピオン祭を狙ったのか思わせる中身に愕然とした。なんでアメリカはこれがヒットするんだ?映画館で新作怪獣映画が二本も、しかもゴジラが二本もかかっているなんて夢のような事態なんだが、なんでもいい訳ではないからなあ。
 冒頭の舞台がバルバドスだったのにはびっくりした。この国の観客がバルバドスと言ってわかるのかどうか。僕だって自分たちで集会をするまでは関心どころか存在さえ知らなかったんだから偉そうに言える立場じゃないけど、大使館も開いてないし、研究してる者もいるのかどうかって国のことはみんな知らないだろ。カリブ海にある、王制を廃止した一番新しい国だ。
 辛い時に頼るのも当然本と映画だが、どうにか気が紛れたりするのは映画である。本は、こちらから働きかけないと内容を理解も楽しみも出来ない。映画は、もちろん作品によるものの、映画館で椅子に座って目を開いていれば楽しめる。しかし金と時間がかかるのでそんなにホイホイ見には行けないし(主観的には今の僕はホイホイ映画を見に行ってはいないのだ!)、辛くなって来ると映画館に行くこと自体が出来なくなる。なので、辛い時でも頭に入らない文字列を追いかけることの方が多い。幸い、最近は本が読めなくなるほどに追いつめられることはなくなっている。
 しばらく前に『デューン 砂の惑星PART2』を見たが、上映開始ぎりぎりで入ったのでパンフを買いそびれた。最近の映画館は最終上映開始時までしか売店を開けていないところが多いのだ。
 前作の『デューン 砂の惑星PART1』も封切り時に見ている。面白かったので原作も読んだ。
 ついでに言えばデビット・リンチ版『デューン砂の惑星』も公開当時に見てるが、こちらはまるで面白くなかった。肩透かしを喰らったと思いながら渋谷東急から出てきたと思う。パンテオンじゃなかったはずだ。今ではいくつかの断片とつまらないと言う記憶しか残っていない。あれから四十年経った。
 原作は欧米でSFのオールタイムベストを選ぶとベスト3に必ず入る作品である。大学ではSF研究会に入るくらいには好きだったものSFを読んでいたと言えるのは二十代前半までで、評判は聞いていたもののフランク・ハーバートは一冊も読んだことはなかった。
 期待して二巻本を読んだ訳だが、見事空振りに終わった。続編がいくつもあるが、もう読まなくていいや。つまらないとまでは言わないが、これがどうしてオールタイムベストなのか理解出来ない。発表当時は新鮮だった惑星の生態系とそこに住む人々の生活や文化を丸ごと描く試みも今では珍しくない。領主や皇帝たちの権謀術策を僕が楽しめるはずもなく、何より、優生学によって銀河皇帝をつくる話がどうして今でも人気を得ているのか!SFファンはそんなに幼いのか?
 にも関わらず今回の『PART2』も楽しめた。何でだろうと思っていたが、人に説明していてわかった。今回のドゥニ・ヴィルヌーヴの映画は画面を見ていると、白人酋長物のアラブの独立戦争に見えるのだ。つまり銀河規模の『アラビアのロレンス』である。アラキスのロレンスがこれからどうなるのかはわからないものの、白人酋長に対して感じるはずの反発はティモシー・シャラメの美しさで相当軽減されている。
 で、都内の上映館を確認して109シネマズプレミアム新宿へパンフを買いに行った。基本的には見た映画のパンフは買っている。茨城に来てからはパンフが売り切れてて買いそびれることも増えた。この前見た『関心領域』は公開二日目でもう売り切れていた。何冊入荷したんだか。また、あまりに映画の出来が悪いと買う気が失せるので、鑑賞前に買うようにしている。最近だと『変な家』は出来が悪くて買う気にならなかった。
 しかし、なんと109シネマズプレミアム新宿は現金払いを受け付けなかった。だからプレミアムなのか!たまたま友人と一緒だったのでクレジットカードで代わりに買ってもらえたものの、いくら見たい番組があってもここでは見れない。
 映画は大衆娯楽じゃなくなったんだなあ。それとも、クレジットカードを持てない貧乏人は大衆じゃないのか?