茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(521)僕は誰に雇われていますか?

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(521)僕は誰に雇われていますか?
加藤匡通
二月××日(月)
 新型感染症がかなり近くまで来ている。今行っている現場に入った初日、朝礼前に別々の会社の作業員が感染者が出ただの、誰々が濃厚接触者だのと話していた。追い討ちをかけるように朝礼で、現場で感染者が出ているので気をつけるようにと訓示された。気を付けろって言われてもなあ。最早現場を止めるつもりはないらしい。

  多分どこもそんななんだろう。第六波のピークは過ぎたと言っているが、こんなことしてて感染が収まる筈がない。経済は回したい、財政出動はしたくない、と。とはいえ去年の夏にオリンピックをやっちまったんだから、今更誰も不要不急の外出を控えろなんて言葉を本気にはしない。燃えてる家に火を着けた当人がバケツで水をかけてても説得力なんかない。

  今入っている現場はV社の仕事ではなく応援である。応援ではないV社の仕事はこの一年でどれだけあっただろう。

 先日残業代が出た。なんと十三万も。いや、一か月分ではない。僕は二週に一度が給料日、残業代は翌月初めの頃にもらってた。これまでは。「翌月初めの頃」と書いているのは、いつとは決まっていなかったからだ。全ては社長の胸先三寸である。

 で、今回は八月からの残業代をまとめてもらった。もちろん「八月から一月まで残業代を貯めといてください!」なんて誰も頼んじゃいない。その時期はろくに休憩も取れなかった共同住宅の排水管更新現場で大変な目に合っていたが、社長は社長で上の会社から金を払われない大変な目にあっていた、らしい。社長、あの、残業代は?と聞くといつも「××社が金払わねえんだよ!」と返されていた。えーと、僕は誰に雇われていますか?まあ一人親方って建前だから雇われてないのかもしれませんが。僕は頭が悪いので、××社が金を払わないのと僕の残業代が払われないことが、どこでどうつながっているのかさっぱり理解出来ないのだが、とにかく払われないのだ。辛い仕事(比喩ではない。わからない人は八月から十二月のこの日記を読むこと。)をして残業までして、金が払われないとは日本国はなんと切ない国なのであろうか!最終的に僕だけが残業代未払のまま残され、これは会社の道具を質屋に持って行って自分で残業代を工面しなければならないのであろうか、社長道具質屋に持ってっていいですか?と聞く寸前だったのだ。ありがとう社長!

 

 

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(520)出張先で『アンという名の少女』『恋せぬ二人』を見る

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(520)出張先で『アンという名の少女』『恋せぬ二人』を見る
加藤匡通
二月×日(火)
 今回の出張先は僕のいるみらい平から電車だと二時間半以上かかる。八時の現場開始には間に合わない。
 最初に行った時は一日だけだから日帰りだった。朝七時に現場の最寄駅で待ち合わせ、と聞いて調べたら始発で出ても間に合わない。たまたまその日に一緒に作業していたのが僕たちに仕事を回してくる会社の人で、その場で次の現場の話が出て、始発でも間に合わないと言ったら「方向一緒だから加藤さん車で拾いましょうか?」と言われた。「あー、それならなんとかなりますね、でも何時にうちの方に来ます?」彼はスマホで調べ「四時に迎えに行きます。」え!
 普段は四時半に起きて朝食を食べたりして五時四十四分発の電車に乗っている。四時に起きるのは始発の五時十八分に乗る時だ。迎えが四時となると朝を食べないにしても三時半には起きないと。運転する訳じゃないし、車中寝てていいんだろうけどさ。きついなあ。
 だが早朝もとい深夜に迎えが来たのは一度だけだった。次からその現場に行くV社の上の会社の人間が変わり、車は僕の自宅方面を通らなくなったのだ。仕方なく、前日の夜に現場の近くに泊まることにした。朝がラクになるとは言え、こんなことは避けたい。プライバシーが確保されてる状態ってのは、身体が仕事に拘束されていない状態のことじゃない。そもそもこの場合、身体はむしろ仕事に拘束されている状態に限りなく近い訳だが。 これが平日で現場が終わってから移動と言われたら断ったかもしれない。
 仕事でホテルに泊まるなんて二十年振りか。日雇派遣の時に一度あった。日雇派遣でも出張の仕事は廻って来るが、僕は断っていたので一度きりだ。その前は、多分会社員だった九十年代半場まで遡る。
 ホテルはビジネスホテル、カプセルホテルやネットカフェより数段上だが快適とは言い難い。枕が変わると眠れないクチなので、ぐっすり眠れないんだよ。それでも布団に入ってる時間は確かに普段より伸びてる。十二時に横になっても六時まで寝てりゃ六時間だ。身体はいつもより楽だろうな。有料チャンネルがカードからレシートに変わっていて、さらに視聴に応じて点数が減っていくのではなく一律一日千円なのにびっくりした。
 今回の出張で唯一よかったと思えるのは、『アンという名の少女』を安心して見れることだろうか。ネットフリックス製作の『赤毛のアン』を現代的に読み替えたドラマで、NHKで日曜の夜十一時から放送されている。評判を聞いていて、見てみたらアンの友だちのお祖母さんが同性愛者として胸を張って生きていた。これは見たい!と思うものの十一時から見たら寝るのはほぼ十二時、五十三歳四時半起きにはもうきつい。だから見るのを諦めていた。なのでちょっと嬉しい。
 次回を見れるのかはともかく、評議会への見事な反撃に快哉を叫び、無事に逃げられたことに本当に安堵した。寄宿学校の下から大量の人骨が出たという新聞記事を読んでいたので、テレビの前で「行っちゃ駄目だ!」と叫んでいたのだ。と、楽しんでいたら次回が二十八日放送と字幕が出た。ん?どういうこと?
 月曜の夜はまたNHKで『恋せぬ二人』があって、これも楽しみにしている。アセクシャル・アロマンティックをテーマにするとは、相変わらすNHKのドラマは攻めている。いいことだ。NHKのドラマが攻めてると気付いたのは『弟の夫』からで、この路線で一番好きなのは『腐女子、うっかりゲイに告る』だが、きりがなくなるのでやめておく。
 こちらも堪能したら字幕で次回が二十一日と知らされる。これは何だ?しばらくして気が付いた。またオリンピックか!いい加減にしろ!






日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(519)出張先でプロティノスを読む

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(519)出張先でプロティノスを読む
加藤匡通
一月××日(月)
 先週来た現場にまた来ている。木曜に帰って来たのに日曜の夜に戻って来た。ホテルも同じだ。

 現場は配送センターとからしい。年末に行った同じく配送センターだかのコン打ち現場の倍の広さだ。都内じゃこんなに広い施設なんか作れない。まだ捨てコンの上に基礎を組んでいる段階で、僕たちは捨てコンの上に設備のスリーブの取り付け位置を墨出しし、鉄筋の中にスリーブを取り付けている。

 前回来た時は一日だけコン打ち合番があった。三人来ていて僕だけ合番、他の二人はスリーブ取り付けである。

 朝一で今日の打設範囲の説明があったが、明らかに型枠が出来てないところが全体の四分の一もある。コン打ち当日に型枠が組み上がっていないなんて聞いてこともない。打てないだろ、これじゃ。案の定、途中からコン打ちが滞りだした。当たり前だ。型枠の一方が立っていなければ生コンは流れ出す。ちょこちょこ打つ場所を変えながら打設を続けるも、ポンプ屋も土工も呆れて「中止だよ中止」と口にしている。なんで監督は前日の内に手を考えなかったんだろう?十一時過ぎに早めの昼飯になった。その間に型枠大工になんとかさせるらしい。

 この日のコン打ちは何とか恰好がついたものの、結局予定したうちの一割程度は打てずに終わった。スリーブのあるところも含まれている。ここはいつ打つの?また僕が呼ばれるの?ここ遠いからそんなに来れないよ?

 今回は設備のスリーブではなく建築のスリーブ取り付けで呼ばれている。鉄筋が組み上がっていないので、予定している設備のスリーブが全部ついている訳ではない。なのになんで建築のスリーブを取り付けに来ているんだかわからない。まあ何をしようが金が入ってくるならいいんだが、聞いていた話と違い、建築のスリーブは取り付け位置の墨も出ていなかった。大工が型枠を立てるのに、鉄筋の中に適当に置いてあるだけ。職人と顔を見合わせ、図面を見ると位置も高さも合ってない。補強筋を入れるのが今回の仕事と聞いていたが、そのはるか前の段階だ。その場にいた建築の監督に話を聞くと、建築はスリーブ取り付けについて何もわかっていないと判明した。恐ろしいことに僕よりわかってない。誰がスリーブを取り付けるのかすら把握していない。職人がスリーブ取り付けには何が必要なのか説明し、どうにか理解した監督は上の者に相談する。当然その時間は待機だ。・・・大丈夫かこの現場?

 結局、高ささえあっていれば位置はずれていいと決まった。こうして文字にしてしまうと普段と変わらないように思えるが、普段は鉄筋をよけるためにいろいろ苦労している。今回それは一切しなくていいと言われ、唖然とした。いくら通気だからって、ええ?まあ、やんなくていいってんならもういいや。

 宿に戻り、プロティノスを読む。以前読んだ『善なるもの一なるもの』を再読したが、案外面白く読めた。前回はなんでこんな議論に付き合わなきゃならんのだと思ったんだが、これはこれでありか、くらいに思えるようにはなった。もちろん納得は出来ない。イデア論ですらついていけないのに、その向こう側としか思えない新プラトン主義の議論に納得なんか出来ないだろ。アンダークラスは諦めろって言ってるに等しいんだぜ?まあでも、この一冊は読み切ろうか。時間かかりそうだけど、待機時間あるし。

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(518)出張先でデカルトを読む

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(518)出張先でデカルトを読む
加藤匡通
一月××日(火)
 組合の口座から経費を引き出そうとして、硬貨を入れるだけでなく下ろすのにも金を盗られると気づいた。こんなところから金を搾り取るとは、これも新しい資本主義なのか?デジタル経済への移行を促す?むしろ末期症状に見えるけどなあ。衰退しつつある日本国にはふさわしいのかもしれないけど。硬貨をないがしろにしていると財務省は怒るべきではないのか?
 なぜか泊まり込みで仕事に来ている。普段は断ってる。今回は成り行きでこうなった。駅前のホテルに泊まっている。ホテルを出るとすぐに飲み屋街だが、もう酒の飲めない僕には無縁である。一緒に泊まっている同僚と食べに出たりする訳でもない。古本屋には行きたいが、少々遠いのだ。映画館も遠い。

 で、当然本を読んでいる。講談社学術文庫から出た小泉義之訳の『方法叙説』は読み終えた。大学に入って最初に読んだ哲学書の新訳だ。基礎演習で読んだ『方法序説』の、まあーつまらなかったこと!何回読んでもつまらない。同級生や上級生に聞いてもみんなつまらないと言っていて、俺だけじゃないんだと安心してもいた。要はわからなかったのだ。だが今回は楽しめた。デカルトを読んで楽しいと言える日が来るとは!三十年かかったけどな。

 で、次に『世界の名著15 プロティノス ポルピュリオス プロクロス』を読みだした。中公バックス版の『世界の名著』は僕が大学生の頃は大きい本屋なら当たり前にあったし古本屋には百円均一で店頭に並べてあった。ところが今回読みたくなってネットで検索すると千円では買えなくなっている。愕然としていたら神保町で、やっぱり店頭に三百円で並んでいたので買って来た。プロティノスは十年くらい前に岩波文庫で『善なるもの一なるもの』を読んだが、これがまたまーつまらなかったこと!

 

 

 

 

反弾圧学習会 逮捕された人をどうたすけたらよいのか 武蔵野五輪弾圧救援会に聞く

反弾圧学習会 逮捕された人をどうたすけたらよいのか

武蔵野五輪弾圧救援会に聞く

 

3月13日(日)14時~16時半

亀城プラザ 第6会議室

土浦市中央2-16-4 JR土浦駅から徒歩十分。または西口からバスで「亀城公園前」下車)

お話 井上森さん(武蔵野五輪弾圧救援会)

参加費 500円

主催 茨城不安定労働組合 連絡先090-8441-1457(加藤)

 

 面白いように次から次へと問題が発覚し続けた東京五輪が終了して半年近く経つ。金のかからない五輪を謳っていたが結局当初の倍以上の金額に膨れ上がり三兆円を越え、後から「復興」が付け足されて忘れられ、新型コロナウイルスによる一年延期の後に開催は強行され感染は拡大、医療が崩壊したのはついこの間のことだ。反対の声は決して少なくなかった。直前には七割が中止・延期を求めていた。だがそれでも人々は、始まってしまえば五輪に熱狂しメダルの数を数え上げては悦に入った。

 今回の東京五輪招致の初期から反対運動は続いていたが、マスコミが目を向けたのは最終局面になってからだった。挙句、終わってから「デモ参加者は金をもらっている」と公式記録映画の監督とNHKはデマを飛ばし、「国民全員が賛成した」と責任を私たちになすりつけている。

 東京五輪への抗議行動では何人かの逮捕者も出ている。その中の一人、武蔵野市での聖火リレーに抗議して爆竹を鳴らしたAさんは威力業務妨害で七月十七日に逮捕され百三十八日間拘束され続けた。街中で爆竹を鳴らすことが犯罪なら旧正月の横浜中華街は大弾圧を受けてしまう。Aさんは現在釈放されたものの起訴されている。五輪が国家的なイベントであり、異論は許さないと言う国の姿勢の表れなのだろう。

 私たち茨城不安定労働組合は労働運動や社会運動に真剣に取り組めば刑事弾圧は当然あるものと考えて反弾圧学習会を行っている。労働運動や社会運動は既存の社会秩序に異を唱え、資本や行政と言った権力に抗うことになるからだ。

 逮捕されるとは運動から、社会から切り離されて一人で警察や司法と向き合わなければならない状態である。逮捕された者が一人ではないと知らせ、支えることを救援と言う。今回は、救援とは具体的にどんな活動なのかを聞く。

 

コロナ状況下で働く人の権利 学習会・相談会

コロナ状況下で働く人の権利 学習会・相談会

1月23日(日) 13時30分~16時30分

土浦市亀城プラザ 和室
土浦市中央2-16-4 JR土浦駅か徒歩十分。または西口からバスで「亀城公園前」下車)

13時30分~ コロナ状況下で働く人の権利 学習会 講師 加藤匡通(茨城不安定労働組合 執行委員長)
14時30分~ コロナ状況下で働く人の権利 相談会
参加費 無料
主催 茨城不安定労働組合   連絡先 090-8441-1457(加藤)

*コロナに関係ない相談も受けつけます。

 

学習会と相談会の二本立!

 厚生労働省の発表によれば新型コロナウイルスの影響で解雇や雇止めにあった人は12万人を超えたそうです。解雇や雇止めまでいかなくとも、収入が減った人は多いでしょう。世界的にも、リーマンショックを上回る経済的な打撃だといわれています。企業はその打撃の痛みを、労働者に向けました。その結果の12万人です。
 そんな中でも、有無を言わさず真っ先に切り捨てられるのが、私たち非正規の不安定労働者です。私たちは多くの場合孤立していて、会社の言い分に反論もできず泣き寝入りしがちです。そんなとき、力になるのが労働組合です。労働組合は、労働者が自分たち自身の手で自分たちの問題を解決するための集まりです。自分たち自身の力で、会社と交渉をして、一つ一つ問題を解決していきます。
 会社から解雇や雇止めを一方的に告げられているあなた。収入減の補償は一切ないといわれたあなた。パワハラをされているあなた。会社の言い分に納得できないのなら、いえ納得はできてもやっぱり大変だ、それでは私の生活ができない、と思うなら、相談してください。もちろん新型コロナウイルスとは関係のない相談も大丈夫です。
 私たち茨城不安定労働組合非正規労働者を中心とした労働組合です。相談に来た方と共に問題を解決していきます。 また、当日はコロナ状況下で私たちが知るべき労働者の権利や制度的なことなどの学習会もやります。
 なお、感染症の拡大状況によっては会場使用ができない場合もあり得ます。詳しくは連絡先電話までお問い合わせください。

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(517)グリフォンの聖地

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(517)グリフォンの聖地
加藤匡通
一月××日(木)
 年明けやや遅めに仕事が始まった。数日したら、別の現場に始発では間に合わないと自宅に朝四時に迎えの車が来て連れて行かれ、その翌日から仕事が途切れた。

  仕事がなくてもやるべきことならたくさんあるので、暇になったりはしない。やるべきことがちゃんと出来るかは別の問題である。
 数年前、土浦駅前に図書館が出来た。新聞の縮刷版とかも結構あって、調べ物には便利だ。だがまあ、 図書館よりもその斜め向かいのつちうら古書倶楽部に行く方が多い。 図書館の下に市民ギャラリーと言う施設がある。普段そっちに行くことはない。関心のある展示をしてないからだ。
 が、今日は市民ギャラリーに行って来た。「パトレイバー三十周年突破記念in土浦」をしていたのだ。十八年から似たような展示を各地でやっていたが気付いてなかった。けど知ってても、わざわざ行ったかどうか。土浦なら行く気にもなるさ。今回土浦に来たのはグリフォンの聖地だから。・・・グリフォンって土浦出身だっけ?最早すっかり忘れている。
機動警察パトレイバー』は僕が大学生の時にOVAから最初の劇場版を経てテレビシリーズまで展開されている。当時は大学のSF研究会に所属する立派なおたくだったので当然リアルタイムで見ている(今でもかSFや特撮、アニメは好きだが、見たり読んだりする量は格段に減っているので「立派なおたく」とは言えない。)。漫画は何度も読んでるし、もちろん『二課の一番長い日』は大好きだが、一連の作品で一番好きなのは傍流の『WⅩⅢ』だ。
 最初の劇場版は、今では信じられないが池袋の文芸坐2(もう文芸地下劇場じゃなかったと思う。)で公開された。前売り買ってびっくりした憶えがある。あれ?通学経路の池袋で降りて文芸坐まで買いに行ったんだっけ?渋谷や新宿では公開していなかったのだ。文芸坐にはその後、仕事で通うようになる。

 正直劇場版の一本目を初めて見た時にはピンと来なかった。OVAを見るより先にこっちを見たので人間関係がイマイチわからなかったためもあるが、これはその後何度も繰り返している。一番の理由はバブルの何たるかを理解していなかったことだろう。今となってはバブルに浮かれていた当時の状況を極めて冷ややかに見つめていた押井守に感嘆するものの、当時は僕も浮かれていた一人だったのだろうと思う他ない。
 とかいろんなことを考えて展示を見ていた。もう三十年以上経つのか。後藤や南雲は格好いい大人に見えたが、彼らの年齢などとっくに越えている。榊や実山は想像も出来ないお爺さんに近かったが、僕の実年齢は彼らに近くなっている。中身はほとんど変わってないままだがな。これは成熟してないということなので、いいことではない。

  展示を見終わって、帰りに入口を見て嗤った。国会や県会の議員共の挨拶状が貼り出してある。あんたら見たことあんのかよ?名前さえ知らなかったんじゃないの?こういうのは恥ずかしいだけだからやめてくれ。

  ところでグリフォンの聖地って緯度0じゃないの?