茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

日雇い派遣日記(1)

                 加藤匡通

十一月××日(土) はつり屋の手元

短い期間経営者気分を味わってから会社を整理しめでたく失業、あるべき階級に戻って数年振りで日雇い派遣に復帰、毎日都内の建設現場に通っている。それ専門の派遣会社がいくつもあって、東京にいたころ登録していた会社に戻った形になる。基本的には建設現場の職人の手元、つまり手伝い役、あるいは雑工と呼ばれる何でも屋だ。給料は日払いで夕方事務所に取りに行けばいいし最近は銀行振込もするようになった。もちろん僕は振込にしている。現在日当八千五百円、交通費は千円まで自腹、さらに税金が引かれるので手取りは七千三百円くらい。もっとましな仕事があるだろうって?僕もそんな気はするが茨城に仕事はないのだ。

都内江東区で仕事。建設現場の仕事は朝八時から夕方五時までが基本で日雇い派遣はたいていの会社で現場ないし最寄駅に作業開始の十五分から三十分くらい前に集合となっているが、今日は九時開始なので普段よりほぼ一時間遅く七時二十四分つくばエクスプレスみらい平駅発に乗ればいい。北千住で乗換地下鉄の最寄駅へ。片道千三十円、つまり交通費は千六十円分だけが支払われる。

今日の現場はこの一週間断続して来ている。既設マンション共用部床石を撤去して雨水を流すための側溝を取付ける作業の手元として入っている。床石ははつり屋がはつる。僕は養生・クリーニング屋R社として現場に入っているがR社本体からは一人も来てなくて日雇い派遣の僕一人。これはそんなに珍しいことでもない。R社本来の仕事からすれば床石はつりの前に周囲をほこりで汚したりはつりガラで傷つけたりしないためのシート養生や作業後の汚れ落しをするはずだが、今回はむしろ監督手元の雑工として入っているようで初日ははつり屋手元としてゴーグルと防塵マスクをしてはつった先からはつりガラをせっせとバールと皮手袋でかき出していた。コンクリに穴を開ける道具で床石を壊しているその床石をかき出しているのだから、タイミングを間違えると怪我をする危険作業ではある。でもかき出さないとどこまではつれたのか分からないのだ。当然全身真っ白。これはR社の職人は嫌がるだろう。しかし僕ははつりや解体といったぶっ壊し系が大好きなので苦にならない。そういう人材は僕の登録している会社では少ないほうで僕は変態あつかいである。

しかし今回はとても楽だ。昨日も片付清掃でここに来て「明日来れないか」と監督に聞かれ、午後用事があるのでと断ろうとしたら朝二時間ほど最後の片付けをするだけだと言われてOKしたのだ。実際に二時間かからずごく簡単な片付けをしただけで作業は終了、午後につくばであった集会に間に合った。もちろん一日分の日当が出る。

この二週間のうち半分がこんな感じの早上がり現場ばかり。この現場だってはつり屋手元の二日目は午前中で予定していた部分のはつりが終わり昼食後は後片付けして解放された。クリーニングのための植木鉢の移動と聞いていたら植木二本植替えて十一時過ぎに終わった日もあった(素人に植木の植替えさせんなよ、あの植木枯れるぞ)。防水屋の手元で入ったら十時の休憩過ぎたら雨になって中止なんて日も。

実働時間や拘束時間が短いのはもちろんとてもうれしいがそういう時に限って金が無いのは昔と変わらず、帰りに映画を見られる訳でもない。むしろあんまりそんな日ばかり続くと一日真面目に働くのが馬鹿らしく思えてきて困る。・・・賃労働がそもそも馬鹿らしいものだ、と言えばその通りなんだけどさ。