加藤匡通
三月××日（水） ××××の家
今行っている現場のすぐ近くに××××の家がある。××××といえば前の××××、だからと言っていいのだろうがやっぱり家は大きいようだ。通りに面した入口からじゃ全体なんかまるで分からないのだ、大き過ぎて。金持ち一族って感じは十分するけどな。大勢で見学に行くとマスクやサングラスで顔を隠した柄の悪い人たちにたいそう邪険にされるそうだが、僕は昼休みにコーヒー飲みに毎日家の前を通っている。一人なら問題ないみたいだな。
現場近くのマンションでは一部屋売りに出ているようで看板が立ってる。低額販売で月々二十万弱から支払い可とあった。僕にはこれが相場に照らしてどうなのか、低額なのかも分からない。どうすればそんな額を払えるのか想像すら出来ない。だいたい茨城に来てからの月収がそもそも二十万前後、この三年は間違なく下回っている。これまでに月々そんなに支払いが出来そうだったことなんか一度もないぞ！（なぜか胸を張る）
そもそも持家という発想がない。これも階級の現れかね？
