茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

日雇い派遣日記(18)

                  加藤匡通

三月××日(水) 混廃、あるいは「地獄が亡者でいっぱいなのさ」

一ト月続いた現場もそろそろ終わり。フェンス取付とか大量に残ってるのにどうするのかと思ってたら監督が応援呼んでたらしい。今日だけG社の下に入って動く者が十人近くいて、現場はようやく形を成していく。明日以降は残工事、と言える程度の分量に収まったようだ。
これまで毎日来てた産廃収集が、今日だけ分別収集から混合廃棄物、なんでも突っ込んで可に代わった。分別する手間を惜しむ分割高だが、とにかく現場を片付けることを優先している訳だ。正直言って現場で働くほとんどの人間は環境負荷なんて気にしちゃいない。面倒で実作業以外に余計な時間をとられる分別を自分でしなくてすむのなら大助かりとしか思わない。
収集したゴミは集積場で人海戦術で分別される。当然分別する現場に日雇派遣で行ったこともある。ゴミの山の中をかけずりまわり手で分別、体育会系の怒号が飛び交い休憩も全員で一度ではなく何班かに分けて取らされる嫌な現場だった。ただし会社によってはゴミの中から資源を見つけたら許可を得て持ち帰れたりして、僕は廃棄された社名入りの往復葉書を発掘して郵便局で切手と交換、それをディスカウントストアに持ち込み換金、丸一日分の日当を稼いだことがある。
建設現場では珍しくも何ともないことだが、新品の使われなかった材料が次から次へと収集車に積み込まれていく。今日積み終ったレンガも残った百個以上がそのままゴミと化す。あれは注文して焼いたものじゃなかったっけ?いつ使えるのか分からない在庫を抱える会社はどこにもない。そうでなくとも倉庫はどこもいっぱいだ。作っちゃ壊し作っちゃ壊し、そうやってこの国の経済成長は成し遂げられた。大量生産大量廃棄、バブルと何が違うと言うのか。
『ゾンビ』をどうしても思い出してしまう。理由も分からず死体が動き出し人を襲い、社会が崩壊し希望のない中で、今ではこの国でも珍しくなくなった巨大ショッピングモールに籠城する人々を描いた映画だ。物資だけは豊かな、しかし閉塞感に充ち満ちた状況を映し出す何度も見たくなるいい映画だが、この国はずっと前からあのショッピングモールだったんじゃないだろうか。