茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

日雇い派遣日記(38)

        加藤匡通

六月××日(月) 仮眠場所

 今通っているバス代を節約出来ない現場の周りには飲食店がない。五分かからないところにコンビニが一軒、ほかに商店はあるが飲食店はない。すぐ近くにゼネコン現場もあるので コンビニは昼時、さぞ繁盛していることだろうと思う。
 高い建物のほとんどない街で、これは同じ二十三区でもずっと世田谷の三軒茶屋あたりにいた僕には見慣れない風景である。茨城とまではいかなくとも郊外に来ている印象が強い。見かける店も郊外型店舗が多く、車での移動が基本かとも思われる。調べたら歩ける範囲に銭湯もなかった。
 当然昼休みに入る店もなく、書き物は全くはかどらないのだ。帰宅して用事を済ますと八時九時でその頃には眠くて頭は働かない。ということで文章が書けないのはこういう事情だから、と言い訳の連絡。
 店に入れば机に突っ伏して仮眠という店側にはありがたくない手があるが、それも出来ないのでこの季節は現場で日陰を探して眠るしかない。最近はとうとう現場のゴミの上で眠るようになった。現場のゴミはガラ袋という袋に入れられている。中身や置いてある場所次第だが、比較的きれいで柔らかいものを選んで並べ、その上に寝ている。現場の人間なら誰もがゴミだと分かるので、そこに寝てるとびっくりしているみたいだ。本人は寝てるからよく分かってないけどな。
 二十代は現場の昼休みに寝なくても問題なかったが三十過ぎたら途端につらくなり、少しでも仮眠をとるようになった。昼に本読んでても眠くて眠くて。この半年、詰所がないから仮眠をとってないけどこれはどこかにしわ寄せがいってると思う。
 デビッド・クローネンバーグの映画『ラビッド』は凶悪な伝染病が蔓延し戒厳下におかれた都市で、ゼロ号患者だった主人公の死体がゴミ収集車に投げ込まれる場面で幕を閉じる。ゴミを圧縮して収集する僕たちもよく見るタイプのあのゴミ収集車のゴミ袋が溜まっている収集口に 主人公がスローで投げ込まれるのは寒々しく痛々しいが、もしかして僕も同じように見えてるのか?まあ、本人は寝てるからよく分かってないけどな。