茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

日雇い派遣日記(49)堤防での草刈り

加藤匡通

八月××日(火)

 昨日今日と日雇派遣の仕事に出ている。G社の仕事がない時に出ようとしたがこっちも仕事がなかったりで日雇派遣も久し振りだ。片道一時間強、交通費千九十円。往復二千百八十円のうち千百八十円は交通費として出る。基本給八千五百円と合わせて九千六百八十円。これから税金がいくらか引かれているはずだ。現場から派遣会社までは遠いので給料は取りにいかず、二日分まとめて銀行振込にした。
 仕事の内容は河川敷の草刈り。
 堤防の芝生に夏草が繁りまくっているのを機械で刈り取り、その後に機械で出来ないところを刈ったり刈り残った根を取ったり、が僕の仕事。僕の会社は四次の下請けで僕一人、僕に指示を出しているのはもっぱら三次のC社で僕はC社に派遣されていることになっている。C社に指示を出しているのはその上の二次の職人。
 実質的には二次の職人が作業を監督していると言っていい。一次の職人は機械を使って十時も三時もとらずにひたすら草刈り。二次の職人も何で休憩しないのかと首をひねっていた。そんなに楽しいのか?まるで耕運機のような巨大な草刈り機で雑草をなぎ倒している。
 二次の職人は肩掛けタイプの回転刃の草刈り機で巨大草刈り機では刈れないところを刈っていて、C社と僕はその手元として刈った草を熊手で集めたり、草刈り鎌で根をほじったりしている。草刈り鎌なんて初めて仕事で使ったよ。こちとらほとんど三週間振りの仕事、とくに夏休み延長戦では手なんか使うことがなかったからすっかり手の皮が柔らかくなって、丸一日鎌握ってたら豆が出来ちまった。楽してたんだなあ。痛いからと少しづつ持ち方を変えるとその度に豆が増殖。半ゴム軍手してるのに。
 作業そのものは単調だがつらくはない。つらいのはその作業環境だ。現場の河川敷へは集合場所でもある最寄駅から車で二十分。河川敷内の移動も車。堤防上、どころか河川敷一帯には自販機はおろか水飲み場もトイレもない。飲物は事前にコンビニで調達しておかないと、一次の職人から嫌みを言われながら車で買いに走る羽目になる。芝のある堤防とは立木もなく屋根などむろんない状態である。夏の陽射しを妨げるものは何もない。加えて、距離はあるものの川面は陽光を反射し、堤防上のアスファルトも照り返す。風もない。 昨日の午前中はそれでも曇り空だったのでまだ楽だったが、以後空はきれいに晴れ渡り、一面の青空になりやがった。見れないのも寂しいものではあるが、いや実際この季節にその下にいると暑いこと!おまけに長袖なので腕にはべったりと服が貼りつき、いやたまらない。
 あの地域は二日とも三十六度を記録しているが体感温度は四十度あったんじゃなかろうか。いや、夏場の堤防での作業があんなにきついもんだとは思わなかった。
 三次のC社は本来養生クリーニング屋で、たまたま受けた仕事だったようだ。養生クリーニングは屋内作業が圧倒的、普段とは勝手の違う上にまるきり表の仕事で見るからに大変そうだった。C社の頭で来ている人は普段は関連会社のクリーニング現場で職長なんだとか。あの現場に一体何社関わっているんだろうか?外注の外注の外注。下請けの下請けの下請け。人件費の削減は回り回って派遣会社にやって来る。僕が登録している派遣会社からも毎日一名来ているが、体力が続かず毎日入れ替わっているとか。電話口で会社の人間が随分遠慮気味に「二日続けて芝刈りでいいですかね」と聞いてきた訳だよ。現場はまだまだ続くそうでC社も一ヶ月以上はいるらしい。派遣会社からもC社からも「明日以降もどう」と言われたが、明日からまたG社の仕事なのでお断りした。