茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

日雇い派遣日記(58)『超兵器R1号』(題名と本文は関係あります)

十月××日(木)

            加藤匡通

 朝夕すっかり寒くなった。実感するのは夜。都内から帰ってきてつくばエクスプレスを下りた途端に温度が違い、一枚羽織っている。寒くなれば着るものが増えてかさばるしかばんが重くなる。これからまだ寒くなるので荷物も増えるだろう。
 今入っている現場のすぐそばに珈琲館がある。喫茶店の連鎖店だ。朝たいてい三十分前には現場に着いているので寒い時期はどこかで体を温めたたくなるが、目の前と言っていい場所に喫茶店があると ついつい入ってしまう。朝七時でも客は結構入っている。早起きの人多いなあ、いや僕もその一人なんだが。ブレンド一杯四百円はマックや他の安売り連鎖店に慣れてしまった身には高い。マックのコーヒー券を安売り店で買うと一杯四十円だったりするからな。仕事の前の一杯なのでそんなにゆっくりも出来ないし。
 でも、こうした値下げ競争は廻り廻って僕たちの首を絞める。街から個人経営の喫茶店がなくなっていると言われたのは二十年前のことだ。バブル景気で地価が高騰し個人商店が立ち退きを迫られた時だし、ドトールみたいな安い連鎖店が拡がり出した時期でもある。安売り店の拡大は、関係する先々で働く者の賃金を切り下げたり、労働時間を伸ばしたりすることによって維持される。物価が上がらないのだから賃金も上げない、と言い出す奴も現れる。百円ショップの乱立を喜んでいられないのだ、本当は。これも「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」なんだろう。ただしこのマラソンは気がついたらいつの間にやら参加させられていたマラソンで、出来ればみんな下りたがっている。走っていると気がついた時には既に奴隷である。