茨城不安定労働組合

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賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(一人親方)(445)てやんでばーろいちきしょう!

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(一人親方)(445)てやんでばーろいちきしょう!

加藤匡通
十月×日(月)
  八月から現場が変わった。前の現場から歩いて十五分くらいの場所なので通勤経路は変わらないから定期はほぼそのまま使える。
  新しい詰所は十七階にある。ついこの間まで作業場所は十九階だったが先日から三十三階に変わった。定員四十六人、最大三トンになっているがそんなには乗れないロングスパンエレベーターは二台。一台は三十階止まりなのでもう一台で最上階の三十六階まで上がって階段で三十三階へ降りて行っている。本設のエレベーターも使えはするが、乗り継いでも二十九階までしか行けないので、昇りより下り、ここはロングスパンエレベーターを選ぶだろ。
  ただし、こうした大規模現場はどこもそうなるが、ロングスパンエレベーターは渋滞する。特に朝など二十分待ちはざらだ。ロングスパンは荷揚げにも当然使うので、日中道具の盛り変えと揚重が重なるといつになってもロングスパンに乗れない事態もしばしば発生する。荷揚げ、揚重はこの日記にも書いた例だと三年前の電気屋の仕事がそれに当たる。盛り変えの大義名分でサボれるようなものだから悪くないのだが、あんまり待たされると本当に大丈夫かと不安にもなってくる。ただ荷物を動かすだけで一時間以上かけてりゃ、あいつサボってんなと思われるんじゃないかと気が気でなくなる。僕は小心者なのだ。
  僕がこうした大規模現場に入っていたのは圧倒的に養生・クリーニングが多く、そういう現場ではロングスパンエレベーターで延々待たされるのは仕方のないことと思われるていた。階段を使えと言われることはあったが、季節と階数によっては階段を昇ることそれ自体が労災になりうるので、強くは言われなかった。休憩のたびに詰所に降りて来て、休憩が終わるとまたロングスパンを待つのは時間の無駄かもしれないが、当然のこととされていた。請け負いではなく常用、監督から言われた仕事に対応するのが基本だったから、いくら忙しいと言ってもその程度の余裕はあった、追われて仕事をする感じではなかったと言ったところだろうか。
  で、V社である。人にもよるのだろうが、今の職長は仕事を目一杯詰め込み、人を追い立てるタイプらしく、僕は慣れない配管取り付けに追い立てられているのだが、問題はそこではない。
  降りるのはともかく、エレベーターで上がってくる待ち時間が無駄だと、三十三階で休憩すると言い出したのだ。休み時間に本が読めないんじゃ何しに来てるかわからないじゃないか、と叫ぶ訳にも行かず、仕方ないので飲み物と本を持って作業場所まで昇っている。作業場所で休んだって身体も休まらないし気持ちも休まらない。現場の中と言うか作業場所そのもので休んでる訳で、追い立てられている作業が気になって休みを早めに切り上げて作業を再開したりしてしまうことすらあって、己の小心な賃金奴隷ぶりが嫌んなる。つまり全く休みになんてならないんだが、作業効率はすべてに優先するのだ!
  法律でどうなっていようが問題にならない。「工場の門の前で憲法は停止する。」のと同じだ。職人とはそういう者なのだろう。与えられた仕事を最小の労力と時間でこなすことに喜びを見出だす。もちろんそれは経営者の感覚に果てしなく近づくということだ。職人の腕や誇りは容易に資本に回収される。現場における正しさは圧倒的に彼の側にあり、僕にはない。徒党が組めれば力関係をひっくり返すことも出来ようが。作業の段取りだの遅れだの知ったこっちゃねえや、ちゃんと休ませろ!面と向かってそう言えたらどれだけいいことか。くそ!