茨城不安定労働組合

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日雇い派遣日記(63)一日だけの現場

十一月××日(木)

                  加藤匡通

 交通量の多い通りに面した現場に来ている。朝、現場の前でY社のダンプを待っているあいだにも車道ではバスが、歩道では自転車が何台も通り過ぎていく。一日見ていたが、車と歩行者は朝がピークだったけれども自転車は一日中現場前を走り続けた。自転車のミニスカートが気にかかるのをねじ伏せて作業に専念。ダンプを車道に停めればたちまち渋滞になるのは目に見えていたので歩道に乗り上げる形で作業。こりゃ各業者、大変だったろうな。僕たちも作業スペースがないので歩道で作業していたが、歩行者が来たといっては手を止め、自転車が来たといっては手を止め。資材搬入なんか大変だぞ。
 小振りなマンションの外溝だったが敷地いっぱいに建物があって作業すべき部分は極少し。幅六十センチ程度、建物四方全部で四十メートルくらいの地盤を、正面だけ少し掘ってあとはならして防草シートを敷いて砂利を敷く、それに深さ十センチ幅十五センチ長さ二メートル程度のコン打ち三ヶ所、コン打ちは量が少ないので手練り。えっこんなもんなの、とは思ったものの僕には時間が読めない。職人に聞いたらむしろ早く上がり過ぎて他の現場に廻される心配をしていた。現場の住所を聞いただけでは最寄駅が分からず、夜労組の用事を七時に入れていたのだが、調べたら五時に駅についていないと間に合わないことが判明、頭を抱えていたので喜んだ。
 だがまあなんというか、世の中そんなにうまくはいかないもんである。作業はずるずると遅れ、さらに砂利がダンプに積んで来た分では足りづ、買いに走る羽目に陥った。職人たちは四時半過ぎに出たが(彼らは車を資材置き場に返して荷台から翌日使わない道具を下ろして終わりである。道が混んでなくとも「仕事が終わる」のは六時過ぎだ。もちろん早出も残業も着かない。)僕は現場を片付けたら五時を廻った。夜の相手には連絡して時間を遅らせてもらった。まあ、世の中こんなもんさ。
 朝、軍手がなかったので現場の真正面にあるコンビニに寄った。目当ての買い物をして出口から現場をふと見ると現場の少し先に作業用品屋がある。道路は丁度現場の辺りでカーブしていてまったく気付かなかったのだ。コンビニと同じ金額で同じ軍手が三つ一組で売っていた。まあ、世の中こんなもんさ。