茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(看板に偽りあり)(136)寝坊

十二月××日(月)
加藤匡通
 寝坊した。五時に目覚ましを止めて、布団から出るのをためらっていたら気がつくと六時を過ぎていた。この時期、つくばみらい市にある自宅の朝の室温はあっても七、八度、布団でぬくぬくとしていたいさ。あわてて起きて飯も喰わずに飛び出したがいつも乗ってるみらい平二十五分発には間に合わず次の四十四分発に乗った。例の高級住宅地からはもう離れているが、今日の現場も家を出てから現場に着くまでほぼ二時間、普段から八時に現場に入るかどうかなので今日はまったく間に合わない。厳しいゼネコンなら時間に遅れると入れないことすらあるので、寝坊はその日の仕事を飛ばしかねない。いや、うるさい現場でなくて良かった。それでもほぼ現場に一番乗りである。Y社の職人には都内南部は遠いのだった。
 朝が早いから二度寝の危険があるのかといえばもちろんそんなことはない。サラリーマンの時は九時半出社で会社が渋谷、自宅が三軒茶屋なので電車に乗っている時間は五分、朝は八時起きだったが毎朝が眠気との戦いだった。朝起きるのは仕事に行くためなのだからその分の給料も欲しいと言った人がいるが、気持ちはよくわかる。
  かと思えば先日現場の帰りに銭湯に寄って気持ちよくなり、自宅に戻ってから石鹸箱を忘れて来たことに気づいた。安物だが思い入れのあるものなので諦める気にはならない。浴槽のジェットに打たれておっさんらしく「あー」とか声を上げ「風呂はいいね、風呂はリリンが生み出した文化の極みだよ。そう思わないかい、碇シンジ君」とか誰に向かって言ってるんだかさっぱり分からない独り言をつぶやいたりといったいい気分も台無しだ。仕方ないので翌日に帰りの駅とは違う方向へ十分近く歩いて石鹸箱を取り行った。現場と最寄駅の距離は一・五キロ、十五分強だがその銭湯は別の駅の方が近い。なにやってんだろうなあ。その後映画を見たかったので石鹸箱だけ回収したら入浴しないで帰るという非道な振るまいまでしてしまった。××湯さんごめんなさい。
  そうまでして見た映画が『ホーボー・ウィズ・ショットガン』だったりすると目も当てられないが(頼むからルトガー・ハウアー仕事選んでくれ)、『灼熱の魂』だったので打ちのめされて帰って来た。