茨城不安定労働組合

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賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(常雇?)(433)海沿い四時起き

賃金奴隷な日々  日雇派遣日記(常雇?)(433)海沿い四時起き
加藤匡通
三月××日(金)
    新しい現場に入った。初日は新規があって待ち合わせが六時五十分、始発でないと間に合わない。始発は五時十八分。普段四時半起きを四時に早めた。NHKの朝のニュースは四時半からなので起き抜けにはニュースも見れない。日によっては新聞もまだ入っていなかったりする。学生時代は『オールナイト・ニッポン』二部が終わるまでは深夜と思っていた。こんな早起きを日常的にすることになろうとは。
    だが、四時起きは初日だけでは済まなかった。最寄駅から現場の詰所までは急ぎ足でも十五分かかる。朝礼は七時四十五分からだが現場周辺はゼネコンの自主規制で七時三十五分から入場制限がかかり、作業員の通行は禁止になる。おまけに、と言うか、もう何年も現場の近くでトイレに行きたくなる困った習慣ができてしまっていて、その時間も考えると五時四十四分では間に合わない。・・・毎日始発だよ。
    現場は海沿いの倉庫みたいなところで、僕は設備の雑工である。床を通した配管の穴埋め要員と言われている。床が貫通しているのは当然不味い。防火処理をしてからでないと穴をモルタルで塞ぐことは出来ないので、穴をしたからAバッドと言う巨大な粘着テープみたいな物で塞いで耐火材のロックウールを詰めてからモルタルを塗る。僕もこの工程を全部やることになっているが、まだモルタルまで進んではいない。モルタルをいじるのは好きなので、早くそこまで進んで欲しい(子どもが粘土遊びや泥遊びが好きなのと同じ理由と思われる。肛門期とか言わないこと。)。
  目の前は海、作業中、目を上げて外を見るだけで海である。津波がくれば逃げ場はない。だが海を見て考えるのは、ここで怪獣が出て来たらどうなるのか、である。海面が盛り上がって何かが出て来たら相当怖いはずだが、その衝撃と恐怖を観客に追体験させた同時代の映画を僕は知らない。多分『ロスト・ワールド』や『キング・コング』の時には追体験をしていたのだと思うが、今では観客はすっかり擦れっ枯らしになってしまったのでもう不可能なのかもしれない(最初の『ゴジラ』はまだ可能だった。当時の観客は初登場の場面で頭をのけぞらせたと聞いている。)。
    海沿いと言うことで、だいぶ不便なところである。最寄駅周辺に銀行の支店は一つもない。ATMはどうにかあるが、僕が使っている超大手銀行のATMはないので、どこのATMを使っても手数料を取られる。派遣会社指定の銀行にしたので給料振込時の手数料は最低額になったものの、これでは二度手数料を取られているようなものだ。いや、ホントに二度取られているな。おまけに支店のATMでないから硬貨が下ろせない。日払いでないとこの痛みはわからないだろうか?僕は今、一日八千円が支払われることになっているが、設備に移行して銀行振込になってしまったので、受け取る度に百円が振込手数料として引かれている。一日分の給料は七千九百円以下でしか受け取れないと言うことだ。しかも街にあるATMでは九百円は下ろせないので七千円しか受け取れず、その街のATMで下ろせば九百円がさらに減っていくのだ。ここ、笑うところじゃないから!
    現場から自宅に至る道に件の銀行の支店はない。つまり、この現場に通う限り、給料受け取りの度に最低で二百八円が引かれ続ける。ああ、こりゃババを引いたな。