茨城不安定労働組合

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 賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(205)取手に日雇派遣(日帝打倒)

賃金奴隷な日々 日雇派遣日記(205)取手に日雇派遣(日帝打倒)
加藤匡通
四月×日(金)
  O社の仕事は三月一カ月で十一日だった。定時は五時半だが一時間以上の早上がりは珍しくなく、午前半日も二回あった。これが日当なら大喜びだが時給である。早出残業も少しはあったものの、これでは稼動日数×八時間分の賃金という計算すら出来ない。輪を掛けて腹立たしいのはそれでも時給が高いからO社での十一日の方が日雇派遣での十一日より金額がいいところだ。しかしなあ、前日夕方でないと翌日の仕事の有無がわからない上に出張まであって何時に帰れるかもわからないんじゃ予定なんか立てられないよ。つーか、経営者にそのつもりはないかもしれないが、この雇用形態は日雇いだろ。これだけランダムな日雇いだと続ける気にはならないな。
  足りない分は日雇派遣で補っている。都内に通って、と言いそうになるがこのところはなぜか取手に現場があり、通っている。大きな工場の改修でこれまで何年も続いていて、この先何年も続くようだ。広大な敷地にあるいくつもの建物を、一つ一つを年単位で改修しているとそうなる。僕が経験した現場は長くても数年で終わるものばかり。工事現場で十年単位で人間関係が継続するとは、思いもしなかった世界である。
  朝礼で見ていたら二十社近く、一日五百人くらいが働いているが、電気と空調JVだけで二百人を越えていた。ちなみに朝礼は、ラジオ体操→各社職長の人員、作業内容、注意事項の報告→監督からの注意事項→指差し確認、安全スローガン唱和で全体の朝礼が終了でそれから各職の朝礼となる。安全スローガン唱和はまず指差し確認として「ヘルメットよいか(ヘルメットよし)、顔色よいか(顔色よし)、顎紐よいか(顎紐よし)、安全帯よいか(安全帯よし)、足下よいか(足下よし)」と言うのを二人一組で向かい合って互いに指差しながら唱えた後に「今日も一日安全作業でがんばろう(おー)」で締める。当然これは会社や現場によってバリエーションがある。()内が全員唱和だが、一番最後の「今日も一日安全作業でがんばろう」への返しはもう長いこと言っていない。みんなが「おー」と返している時、僕はこっそり「日帝打倒」とつぶやいているのだ。
  作業内容は養生・クリーニング。この前は一日クリーンルールの防塵塗装の床を掃除し、今日は別の部屋の防塵塗装の床に防炎シートで養生をしている。今日の部屋はこれから天井にいろいろ取り付けるらしい。防炎シートとは工事現場で見かける厚手の白いシートである。名前の通り燃えにくいので溶接の養生などで使われる。防塵塗装とはこれまた名前の通り塵が出ないようにする樹脂塗装。たいてい緑色で表面はツルツルピカピカ、新品の時は天井の蛍光灯どころか覗き込んだ自分の顔が鏡のようにはっきり写る。傷がつきやすいので養生もクリーニングも注意しないといけない。シートを敷く時も引きずらないようにしている。
   今日の会社はM社だが、確認の電話で会社名を聞いてから作業内容が養生・クリーニングと聞いて驚いた。僕はM社を鳶・土工の会社としか知らなかったのだ。前に書いた、鳶がコン打ちしていてイケイケで大変だったところがМ社だ。以前から別班として養生・クリーニング班があったのだとか。鳶・土工は汚す仕事、養生・クリーニングはきれいにする仕事とまったく相容れない職種なので一つの会社にあることが驚きである。
  もっとも、土工は穴掘りコン打ちの専門職ではあるものの、言われたことは何でもやる何でも屋でもある。養生・クリーニングもその点では同様だが、どちらも便利に使われてしまう職種ってことかな(始めから何でも屋として入るのが雑工で、これは僕が一番馴染んでいる職種だ。)。昔、派遣でよく行っていた鳶・土工の会社で、ある時作業内容がクリーニングと言われて何かの間違いだろうと思いながら現場に行ったら、よくコン打ちでバイブ握ってた職長がクリーニングをしているのを見てびっくりしたことがある。土工と養生・クリーニング工では服装からして違うので違和感が極めて強かった。後日そのことを日雇派遣の同僚に話すと彼も「ええー、××さんがクリーニングしてたの!」と相当驚いていたので、やはり違和感は強かったとみえる。
  ところで、通っているこの現場日雇派遣の現場としては破格の近さなのに車で行く訳には行かないのだ。実は現場の近くにコインパークがあるだろうと初日に車で行ったのだが、探せど探せど取手にコインパークなんてありゃしない。さりとて工場に乗り入れる訳にもいかず、大変な目に遭っている。それに懲りて電車を使っているのだが、これがまたどうやっても千円を越える。守谷まで車で行って一番安いコインパークに入れても千円は越える。つまり実質手取りはやっぱり七千五百円。こんなに近いのに!