茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(451)『ロミオの青い空 脚本集』

日雇派遣日記 賃金奴隷な日々(一人親方)(451)『ロミオの青い空 脚本集』
加藤匡通
一月×日(月)
    年明けも年末の続きで空調設備縦配管の架台取り付けだった。当然V社の仕事、相変わらず海の近くだ。
 縦配管は建物を上下に貫通する配管で、当然各階毎に固定する必要がある。固定するのが架台で、これは「がだい」と読む。架台はCチャンとLアングルと言う鉄骨材を加工して作る。CチャンもLアングルも断面がそれぞれCとLなのでこう呼ばれているが、Cチャンの方はCと言うよりはカタカナのコだよな。これを二十センチに切ってボルトを通す穴を開け、二つをつない取り敢えず架台は完成、次は設置になる。架台は配管の横に設置し、Uバンドで配管を押さえる形になる。もちろん名前の通りUバンドはUの字形をしているのだ。架台の床面に穴を開け、配管と接する面にも配管サイズに合ったバンドの穴を開け、次に床に穴を開けてアンカーを指して架台を固定する。で、Uバンドで配管をとめて終わりだ。こう書くと簡単そうだが、アングルに穴を開けるとパンチャーと言う機械に不具合が生じたり、床に穴を開けようとするとコンクリの中の鉄筋に当たってドリルが進まなかったりと面白いくらいいろんな問題が起きて作業がなかなか進まなかったりする。パンチャーはかなり高価な道具らしく、壊したかと何度もひやひやした。つーかそもそもCチャンもバンドも足りないのだ。去年のうちに監督に頼んでおいたものの、年明け早々に届く筈もない。今日は何個取り付けられるんだか。職人たちはいつまでやってるんだと呆れているだろう。
 仕事が終わって中野まで出た。まんだらけに行ったのだ。十年、いや二十年近く行っていなかったはずだ。店がいくつにも細分化されててびっくりした。自分が行くべき店がどれなのかをわかっていれば早いが最初はどこへ行くべきか把握するのに時間がかかった。
 去年読んだ本で最大の収穫は『82年生まれ、キム・ジヨン』や『JKハルは異世界で娼婦になった』や『彼女は頭が悪いから』ではなく(どれも読んでいて何度も謝りたくなり、打ちのめされた。小説の力を再確認もした。)、『西洋古代の奴隷制』でもなく(五十年前の本だ。翻訳をした古代奴隷制研究会は会としてはこれしか出版していないようだが、この研究の現在を是非読みたい。)、『PUFFと怪獸倶楽部の時代』だった。後半のインタビューより前半の中島伸介の自分語りが素晴らしく、最近では珍しく何度も読み返している。登場する富沢雅彦の文章を読みたくなって文献リストや掲載誌を探しにまんだらけに通い出した。商業誌に書いた文章は大半を読んでいると思うが立ち読みがほとんどなので、読み返したことはない。中島伸介も単著と言える本はこれしかないと思うが、富沢雅彦はまとまった著作がないまま没してしまったので、古雑誌を漁るしかないんだよ(ネットを使えば簡単に集められるのかもしれないけど、それは違うと思っている。探す過程での思いがけない発見とかも含めての古書探索だ。)。
   まんだらけで古雑誌発掘に精を出していたら(たかだか三十数年前の雑誌を発掘も何もないもんだが、少なくとも店頭にはもう見当たらない。)意外な物を発見した。『ロミオの青い空  脚本集』!そんなの出てたのかとびっくりしながら手に取ったら、二〇〇三年の本で商業出版ではなかった。脚本家島田満自身が、脚本を書いていて「いまも戦争や貧困にあえいでいる子どもたち」に対して何かしたくなり出版したらしい。九・一一から始まる反戦運動の流れの中にある動きの一つ、と言ったら言い過ぎだろうか。売上はNPOへ寄付されるとある。そうかあ。けど、島田満ももういない。
 特撮もアニメもテレビ番組全話の出版は極めて少ない。著名な脚本家が書いた有名なテレビドラマはかなり出ているものの、そんな物は放送された中の極一部だ。DVDや配信サービスで映像は見ることが出来るから脚本なんかいらないって話にはならないはずなんだが。
   そういや原作も古本屋で単行本買ったんだよなあ。組合大会の議案書作りながら読もうか。