茨城不安定労働組合

誰でも入れるひとりでも入れる労働組合である茨城不安定労働組合のブログです。

日雇い派遣日記(4)

                   加藤匡通
十二月××日(日) 年末年始休み前
 
 二十三区内の病院の増改築工事のクリーニングに入っているN社に入る。待ち合せは地下鉄の駅だったが経路で確認したらJRの駅からも歩いていけるとわかったので地下鉄一駅分けちって歩いた。ヘルメット、高所作業時に使う安全帯、安全靴、さらに簡単な道具類と着替えを持っているのでけっこうな大荷物を抱えて十五分。これで百六十円浮くけど自宅最寄からJRの駅までそれでも片道九百六十円。待ち合せ場所から現場に歩いたら、以前来たことのある病院だった。

 N社はこの現場に他の派遣も使って二十人近くを入れている。全員がクリーニングではなく雑工でも入っている。養生・クリーニング屋は現場では業者と業者の隙間の仕事を回されることも多く、半ば何でも屋扱いなこともあって雑工としての仕事も珍しくない。もちろん本工の養生・クリーニング屋、職人として自覚を持った人は嫌がったりするのでそういう仕事は派遣に回すことが多い。

 朝礼がなかったので全部で作業員が何人なのか分らなかったが、二三百人はいたろう。この規模で朝礼がないのは珍しいが、学校といっしょでかったるい話を立ちながら聞かされなくて済むのはどっちにしろありがたいことだ。けどそれも詰所が小さいことで台無し。朝は着替える場所もなく外で着替えた。プレハブ二階建ての一室が現場作業員の詰所に当てられているが全員が座れるいすもない。作業前に体を温めながらゆっくりする場所もないということだ。たとえ煙草の煙だらけでも(いや、僕は吸わないので分煙してあるほうがいいにきまってるんだけど、そんな詰所、プレハブではありえないからね)外気に触れない詰所は欲しいよ。みんなゼネコンを罵っていた。当たり前だ。作業員の人数分の詰所くらい用意しとけ!

 作業そのものは雑工の方で、改築部分の床の点検口の蓋の高さ調整だった。点検口そのものは新設だけど蓋だけ古いままで歪んでたりする。で、高さが合わない水平に収まらないとなる。仕方ないので蓋の裏のふちに硬質ゴムを貼って高さを調整するのだ。二人一組で丸一日、一人で持ち上げるには少々難のある蓋を持ち上げゴムの貼り付け。何せ歪んでいるので一回ではきまらず蓋の上げ下ろしを二回三回と繰り返す。特別な技能が必要でも体力を使うわけでもない。まあ、この作業しとかないと病院として使われるようになってから床の高さが違うのでつまづいたりするかもしれないな。

 帰りに病院近くの銭湯でゆっくりする。「風呂は命の洗濯よ」。当然茨城に銭湯はないので(水戸にはあるがまったく僕の生活圏ではない)これは都内に出てきたときのぜいたくだ。けど四百五十円はちょっと痛い。

 年内の仕事は明日で終わり。都内で日雇い派遣だった頃は例年年末はいつまで仕事があるのかというのは大きな問題だった。もちろん日雇い派遣に限らず、定額の月給制ならいざ知らず日給月給の仕事をしている者に共通の話だろうけど、真っ当な職人の日当の七割から半分以下ですらある日雇い派遣にはより切実な問題となる。年末年始は少なくて四、五日悪ければ一週間以上現場仕事は休みになる。休みの短い現場に入れていればラッキーだけど、特に年始はそんなに人手を使わなかったりするので仕事は少なくあぶれることは多い。

 今年は例年より一日早く仕事を切り上げ休みは六日。親と同居なので帰省するわけでもないし、十年前のように炊き出しに関っている訳でもないのでせいぜいゆっくり休むとしよう。・・・去年までは自営だったから最悪三が日でも仕事に出ることは有り得た(一度正月の三日に出たことがある)。けど、もうそんなことはない。